女芸人No.1決定戦 THE W 2018

 

第一試合

ゆりやんレトリィバァ(「コント「情報番組」)

●あぁ〜しらき(リズムコント「バイザー」)

 

第二試合 

●吉住(コント「女性議員」)

●ニッチェ(コント「エステ」)

 

第三試合

●根菜キャバレー(漫才「万引き」)

●合わせみそ(漫才「やりたい仕事」)

 

第四試合

横澤夏子(コント「運動会」)

紺野ぶるま(コント「地元に帰った女優」)

 

第五試合

阿佐ヶ谷姉妹(コント「お見舞い」)

●紅しょうが(漫才「恋人レンタル」)

 

 

勝戦

 

阿佐ヶ谷姉妹(コント「誘拐」)

●あぁ〜しらき(「男かな女かな」)

●ニッチェ(コント「マスク」)

●合わせみそ(漫才「映画」)

横澤夏子(コント「回転寿司」)

 

 

 

 

各組一言感想

 

 

ゆりやんレトリィバァ×あぁ〜しらき

前年の優勝者ゆりやんが滑って始まるという波乱の幕開け。準決勝もこのネタだったなら、他の人を上げても良かったんじゃないかと思う。番組的には、ドラマや背景が欲しいという雰囲気があるので、前年の覇者は入れたかったんだと思うし、このネタでもブラッシュアップして仕上げてくるか思い切ってネタを変えるかしてくると思ったのかもしれない。ゆりやんのネタは色んな要素が詰め込まれていて分かり難かった。中継の件は新しい視点で良かったと思うけど、小道具ボケなんてゆりやんが生まれる前からあるような古典的なボケであそこで「何をやってるのか分からないし面白くない」という印象を与えてしまった。その後は結構盛り返したと思う。過去のR-1などの賞レース、この間の七変化もそうだけど、滑るときは思いっきり滑る。コメントや一発ギャグも基本的に滑ってるけど最先端の感覚のネタや万人受けするネタもできるという不思議なセンスを持ってる人だと思う。あぁ〜しらきの1本目は、ネタの構造がシンプルで分かりやすさがあって良かった。ただ、はっちゃけたネタを期待した部分があったので、淡々とローテンションで進んで行くというのは、ちょっと期待外れだったかなあと思うし、賞レースで跳ねるタイプのネタでもないように感じた。

 

吉住×ニッチェ

吉住は政治ネタと恋愛を上手く絡めていて面白かったけど、その分、会話としてよく分からない感じになってしまったように感じる。野党と与党が禁断の恋というのは面白い言葉遊びだけど実際にはそんな事は無い、みたいな所で入って行き難さがある。ニッチェで四組目だけど、ようやくここでしっかりと受けたという感じがする。テレビで披露した事のあるネタ、という事で自分は少しテンションが下がったけど、ネタ選びとしてはすごく良かったと思う。ポイントがはっきりしたネタは見やすい。売れっ子組は、売れっ子故に賞レースで掛けるべきネタを先にテレビでやってしまう場合があるのは唯一不利な材料だと思う。個人的には賞レース決勝の少なくとも一本目のネタはテレビ初であったり新ネタの方が良いなーと思う。

 

根菜キャバレー×合わせみそ

正直、即席コンビが二組決勝に上がるってどうなんだろうと不安もあったけど、自分は二組とも良かった。根菜は「陰と陽の化学反応」、合わせみそは「夢見る妄想漫才」というキャッチフレーズがついていたけど、コンセプトやテーマが明確なのは強いと思う。コンセプトやテーマが明確であれば、未完成でも思い切って決勝まで上げてくれるというのは無名の女性芸人にとってこの大会は大チャンスだなーと思う。個人的には根菜のネタの方が良かった。ここはkittanの知名度がないからあまり受けなかっただけでネタは面白かったと思うし、知名度が上がって技術がつけばすごいコンビに化けそう。実質二人ともボケというのは二人に存在感が出るから強い。感想を回ると「百合」という見方があって、そういう意味でも一個個性が乗ってるんだなあと思った。合わせみそは、結成3ヶ月だかでこんなにかっちりとネタのシステムを構築してるのは本当に凄いと思う。つっこみの子がボケの子の肩に手を置いて揺する形だったり、表情演技だったりも良かった。TEAM BANANAとかもそうだけどつっこみがおっとりしていて優しいコンビは男女問わず良いなと思う。上手さで言えば、紅しょうがや、昨年のアジアン、過去のM-1ファイナリストと比較すれば、レベルは落ちるけどそういう事でもない。無名でもテーマを掲げて面白いネタをやれば、コンビとしての活動キャリアが短くてもスポットを当ててくれるというのは凄い大会だと思う。紅しょうがの方が上手かったけど、古典的なブスネタ漫才だったので自分は、東京の即席ユニットコンビの方が遥かに面白く感じられた。

 

横澤夏子×紺野ぶるま

横澤夏子の一本目のネタは何年か前の単独で見た覚えがある。その時にこの人はR-1決勝常連になって優勝するのは時間の問題と思っていたけど、R-1ではなんでそのネタなのかと思うようなチョイスばかりだった。大きな大会で披露したネタとしては過去最高のものだったと思う。紺野ぶるまは賞レースではいつも悪意ネタで惜敗してる印象だけど今回もそんな感じだった。導入の芝居の雰囲気が良くて、言葉は少ないけど情景が浮かび上がってくる。AKBの件については、自分はAKB関連のアイドルに特別な思い入れはないけど、表現力の高さや容姿の良さといった魅力はある程度分かっているつもりで、それでも「AKBにいそうはもはや悪口」という女性が言いそうな悪口とも褒め言葉とも取れる微妙なニュアンスというのはすごくよく分かるし、それを切り取る紺野ぶるまのセンスはすごいなーと感心する。言葉通りに受け止めるのではなく、どういう流れでこの悪意ネタが差し込まれたかという背景があるし、ファンの人が不快に感じるのは当たり前と言えば当たり前だけど、芸能界を取り巻く世間の流れが感覚的に掴めてないとも感じる。

 

阿佐ヶ谷姉妹×紅しょうが

阿佐ヶ谷姉妹は結構シュールなネタで、自分はどちらかというとリアリティを感じさせる設定の方が入り込めていいかなと思った。ただ存在感、表現力、ワードセンスがずば抜けていて、その辺もあまり気にならなかった。牧野ステテコが「阿佐ヶ谷姉妹はただ存在しているだけですでに面白い」「阿佐ヶ谷姉妹はみんな好き」という事を言っていて納得した。ネタが面白いのに加えて、二人が揃った時の画面上の存在感がすごい。紅しょうがははっきりとここしか持ってないキャラクター性が見えたら良いなと思ったんだけど、ぼんやりとしか感じられなかった。

 

勝戦

番組の中で一回戦のネタは一旦リセットして、と再三言われてたけど、その事を忠実に守れば、受け量、ネタの出来として阿佐ヶ谷姉妹優勝は妥当だと思う。一本目より面白いネタだった。ニッチェは「黒いマスクは何か嫌」という所をここまで展開させて人情ドラマに仕上げる表現力とネタの創作能力はすごいと思う。ただ大きな笑いというより感心する気分に流れた。あぁ〜しらきは一本目のネタよりこの宴会芸の方がしらきさんらしくて楽しみやすかった。賞レースというよりあらびき団や山−1というノリではあったけど。合わせみそは二本形を揃えているのが良い。見てる側の慣れもあり、二本目を見てる時の方が安心して楽しめた。横澤夏子は、二本目は子供を怒る場面が多くて言葉が悪い所もあり一本目にあったハッピーでハートフルな雰囲気が薄れてしまった。