キングオブコント2021

各組について一言ずつ

 

蛙亭

ストーリー性が強いと、笑いとは別の感情に流されるところがあって、「映画で見たい」という松ちゃんのコメントもギャグとしてでなく、自分が受けた印象に近いものがある。蛙亭は「有ジェネ」とかネタ番組で見て、いつもああすごい面白い感性を持ったコントを作るコンビだなーと感心している。自分はもう少し日常的な設定のネタが見たかったかなと思う。中野さんが奇人でそれをニヤニヤしながら、愛しそうに受けるイワクラさんの関係性のネタが好き。ただストーリー進行があるので、停滞感はない。

 

ジェラードン

アタック西本さんの登場シーンでついにジェラードンが爆売れする、と思った。2人の掛け合い、だれかが言ってたように海野さんの引いたつっこみも心地よくて5分間ずっと楽しかったんだけど。ただここはストーリー進行や展開が少なく、そういうネタなんだけど、やや停滞感はあった。

 

男性ブランコ

準決勝初日イチウケと聞いていた「ボトルメール」、噂に違わず面白かった。衣装や音楽、モノローグの入れ方など、雰囲気作りが良かったし、平井さんのあの見た目とあのキャラクターに魅力があった。モノローグはハートフルな雰囲気がありつつバカっぽさもありつつ。主人公の視点の提示があることで話に入り込みやすさがあった。演出のこだわりやエッジの鋭さ、そしてあの平井さんの見た目にかつての千原兄弟のコントを連想したお笑いファンも少なくないはず。2番手までも十分に受けていたけど、ここで明らかに雰囲気が変わった。

 

うるとらブギーズ

満を持しての「迷子センター」だったけど、満を持し過ぎたというか、やはりネタには旬というものがあるんだと感じた。これを2019年の2本目に持ってこれていたら…と思ってしまう。うるブギの最強ネタ、今のコントシーンで屈指のネタであることは間違いないんだけど。あと佐々木さんの言葉が聞き取りにくかったり、八木さんの間合いや演技もいまひとつだった気がする。強いネタだけどなんかうまく歯車がかみ合ってない。

 

ニッポンの社長

松ちゃんの低評価やコメントは、シンプルで物足りなかったという雰囲気だった。自分はシンプルで、あまり話の進行がないことも含めて見やすくて好きだった。自分がニッポンの社長が好きすぎてあまり冷静になれていないのかもしれない。松ちゃんが10点上乗せしたとして、3位と考えると4位は妥当かも。ボケ1個のストロングスタイルのニッ社が大好きだけど、物足りないという印象を受けるのもわかるというか、しょうがないんだろうなあと。

 

そいつどいつ

前半は「パック顔がホラー」とわかりやすいけどわかりやすすぎないかと思ったけど後半にかけての仕掛けはインパクト大で楽しかった。ただ演出の面白さや新しさと、コントとしての笑いの満足度はまた違う所もあり。前半がベタすぎたのと、ホラー要素の強さが仇となったのかあまり点数は伸びず。今年の優勝者以外全組に感じるけど、来年の有力ファイナリストであり、優勝候補であり、今年の活躍が楽しみだ。

 

●ニューヨーク

会話の掛け合いのセリフの面白さとかはあってすごい良かったんだけど、会話が成り立たないことでグルーヴが生まれにくい感じもする。筋書がやや和牛の「ウェディングプランナー」と被る。最後の展開は何をやっているのかいまひとつわからなかった。コントコントしすぎというか、自然な感触がもう少し欲しくなる。

 

ザ・マミィ

酒井さんのナチュラルボーンなキャラクターは大好きだし、今回激ハマりしたのはわかる。林田さんの優しそうな雰囲気も好き。ただ自分はこのネタもハマりきらなかった。まず「やばいおじさん」のネタがあまり好きじゃないのがある。線引きは難しいけど自分はお笑いのネタの題材として見ていて、「そうならざるを得なかった弱者を揶揄している」ように感じてあまり好きじゃない。結局、そういった偏見の目をなくそうというテーマのコントになり、見ている側の共犯意識はなくなるんだけど、はっきりと言うとそういうメッセージが嫌いだ。空気階段の電車のネタと似てるんだけど、やばいおじさんをネタにしても、実はいい人でハートフルな話に仕上げれば、悪ではないというパターンがどうしても好きになれない。

それと林田さんのキャラが超善人なのはわかるけど、見ず知らずの人に鞄や財布を預けるという行動が良くわからなかった。「トイレにいくから財布をあずける」という行動は普通に考えるとあり得ない。夫婦や恋人であれば財布を預けることはあるかもしれないけど、トイレに行くから預けるという事は意味が分からないのでしないと思う。そういう部分が気になって後半の盛り上がりに参加できなかった。

 

空気階段

ここでも審査員から「映画のような」とコメントがあったけど、こちらはストーリー展開が面白いのに加えて、やっていることが真剣になればなるほどにバカバカしく感じられて笑いの印象が強かった。もぐらさんのビジュアルの迫力や、ゴールデン、一世一代の賞レースの決勝なのにSMネタみたいなはみ出し方も含めて魅力的で、なんだかわからないけどすごいものを見たというコントだった。考えてみたら「クローゼット」と「電車」で決勝に行けなかった年から、空気階段の優勝のカウントダウンは始まっていて、タイミングの問題だけだったかもしれない。特に1本目は、明らかにやばい人という所ではなく、どこにでもいる普通の男性の悲哀を描いていてそこが良かった。2本目のおじさんも、自分の中では笑える、許せるラインの狂気性だった。

 

マヂカルラブリー

いやーマヂラブらしいというからしすぎるというか、つり革というか。自分たちのネタであっても過去のネタと似通った印象を抱かせたら不利。深夜に学生が心霊スポットで、という情景があまり浮かんでこなかった感じはある。本質的なネタの面白さとは別に、時代の空気より一歩先に進んだような感触が欲しかった。

 

ファイナルステージ

点差で言えば、2位3位でも十分逆転可能だと思うけど、ファーストラウンドが終わった時点でよっぽどのことがない限り(空気階段が大きく外し、2位3位が爆跳ねするとか)空気階段優勝というムードだった。まあ自分がマミィにハマってなく、男ブラが「ソウドリ」でやった袋のネタと事前に知ってたからというのもある。

男性ブランコ。ここでもう一本、強いネタを用意できれば勝機はあった。袋は展開が少なく3分程度で見るのがちょうどいいネタ。「ソウドリ」で見た時からストーリーの続きがあったけど、構成力の巧みさは感じても大きな山場にはならなかった。

マミィ。1本目ははっきりと苦手だったけど、2本目は単純にネタの強度が足りない。酒井さんが社長に見えないし、社長と部下の関係性に感じられない。審査員も言っていたように「あるタイプのネタ」だ。ここも酒井さんのキャラに特化した強いネタの用意があれば勝機はあったはず。

空気階段。よほど大スベリでもしない限り空気階段優勝のムードの中、1本目と違ったテイストで見る人によってはこっちの方が面白いというネタを持ってきて、余裕のあるウイニングラン。この3組の審査で空気階段が勝てなければ相当おかしい審査だった。冒頭からラストまで様々な仕掛けを凝らして見る側を飽きさせなかった。かたまりさんの書く台本は小説や演劇に近い雰囲気がある。

 

キングオブコント2021