明日の記憶

若年性アルツハイマー認知症を発症した男性を描いた映画。

アルツハイマーという病気の苦しさを伝える映画という面もあるけど、リアリスティックな内容で人間ドラマとしても見応えがあり、面白かった。アルツハイマーは誰しもがなる病気ではないけど、誰しもが老いていき、記憶力や身体能力が落ちて行くのは自然な事なので他人事には思えず、自分もこんな風になるのかもしれないと想像して恐ろしくなった。

幻想や幻覚のシーンがたくさんあって、そういう描写は何が現実で何が夢か判別が難しくなるので苦手なんだけど、この映画に関してはアルツハイマーに罹った人間の症状や心理状態をリアルに具現化しているようで効果的だったと思う。アルツハイマー認知症を疑似体験してるような気分になった。

ストーリー展開や演出が自然で良かった。企業名や既製品、渋谷の街といった現実にちゃんと存在してるものがじっくり描かれていたのが物語に深みを与えていたと思う。ラストシーンは救いのあるほっこりさせられるようなものではあるけど、ハッピーエンドとは全く言えなくて、現実はここで終わりじゃなくてもっと長く続いて行って、その先の方がもっと大変だったりするんだろうと想像して、現実に病気で苦しんで戦ってる人達の事を考えさせられる。

ハイライトは後半に出て来た大滝秀治のシーン。台詞が素晴らしかったのもあるけど、こういう存在感のおじいさん役の俳優はなかなか出てこないと思うので、亡くなられたのは本当に無念だと思った。

明日の記憶 [DVD]

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