キングオブコント2022 感想

個人的には跳ねきらずモヤモヤが残る回だった。個人的順位は、1位ダイアン津田&ランジャタイ、2位クロコップ、3位兎のコメント、4位や団の雨 5位いぬという感じで、冗談交じりだけど、実際そんな体感だった。

 

ファーストステージから各組について一言ずつ

 

クロコップ

ゲームとアニメとコントをミックスさせたような新感覚の楽しいネタ。ゲームをやっている時に感じる享楽性があり、見ている間ずっと楽しかった。早いテンポのBGMに合わせた動きとボケがあり、手を変え品を変え、いろんな手札を次々に披露していく流れが楽しい。個人的にはここがファイナルまで残る展開を期待したけど、トップにしては高得点という所に落ち着いて残念だった。

 

ネルソンズ

和田まんじゅうの存在感はすごい。志村けんを引き合いに出すのは違うのかもしれないけどそのくらい、まんじゅうという存在、人、キャラクターが魅力的で強い。まんじゅうが言えば何を言っても何をやっても面白い域に達してると思うけど、更にネタが作りこまれていてすごかった。VTRで悲哀と言ってたけど、やはりネルソンズはまんじゅうが悲劇に巻き込まれていく話が面白くて、その方向に狙いを定めたのが良かったと思う。ここは来年以降もまだ優勝するチャンスがありそう。

 

かが屋

予選で見た時はSとMというテーマがあまりかが屋らしくないんじゃないかと思ったけど、この話は、好きな異性に振り向いてもらいたくて異性の好みに無理をして合わせるけなげな恋心と、それに気付いて相手に好意を抱く話で、提示されているテーマに反してさわやかな男女の心の動きを描いている。そこにかが屋らしさがある。とはいえ初見だとSMの女王様の変なしゃべり方という所が分かりやすく、笑いどころを提示されているように感じてしまう。やはりSMというテーマは扱いが難しいんだと思う。かが屋のコントの魅力は、表情の変化や所作で、ドドドッと受けたり、何でもないような会話がよくよく考えると意味がある事に気付かされる、さりげなさにあると思う。そういう意味で今回のネタは言葉で全部説明してくれるし分かりやすいんだけど、あまり魅力は出てない気がした。他9組との比較というより、過去のかが屋のネタと比較して。

 

いぬ

受けきらなかったのは残念。飯塚さんの「キスは反則」というコメントはあまり意味が分からなかった。同じことの繰り返しに見えるけど、一回目の腕立てと二回目と三回目はそれぞれ全然意味が違って、それなのに同じ動作をするという所がこのコントの魅力だと思う。ハートマークになって終わるラストの絵が美しかった。以前に北野武が映画は4枚の絵で見せるイメージを持ってる、というような事を話していて、自分もその話を聞いてからコントの最後の絵に対して拘りを感じるようになって、最後の絵が綺麗に決まるコントは少し評価が高くなった。題材に関して、不倫っぽいから敬遠されるのかとも思うけど、それだったらコットンのネタに対してヘイトがもう少しあっても良いから倫理観どうこうの話でもないのかもしれない。ただ作中で何も説明をされてないので、純愛という風に自分は見るし、余計な事を考える必要はないと思ってる。松ちゃんが高得点つけてくれたのは救われる。

 

ロングコートダディ

今回のネタはベタで分かりやすいという感じもしたけど、話の通じない相手とコミュニケーションを図ろうと苦心する過程を描いたコントなのかなという感じもする。ただ帽子が落ちるからしゃがんでという事を伝え続けて、伝わらない5分間。一見ベタなようでシュールでもあり、ロングコートダディらしい新しい感性を感じる。相手を怒ったり、バカにしたり、何で伝わらないんだと憤るような、普通はあっても良い切り返しはなく、番組ADという役回りに沿って、相手に気を遣って失礼な事は言わず、番組を成立させるために伝え続けている。そういう相手への配慮が見える所が現代的に感じた。

 

や団

気になる所が2つあって、1つは死亡判定が荒い、もう1つが自分が殺人をしたわけでもないのに友達の為に死体隠蔽工作をするのはなぜなのかという所。改めて見てわかったのは、死亡判定が甘いのはドラマとかでも良くあるけど、これはそうしないと話が転がらないので仕方がないことだという事、友達の為にそこまでやるのは経験者なので自然と普段は隠してるアブノーマルな人格が出てしまったという事。2つ目に関しては、よくよく考えてみれば論理的だ。白いパーカーのフードをかぶって鼻歌を歌ってる場面は最高にサイコで面白かった。キャラクター性が一切ない、3人の演技と台本だけで進行する形がシンプルにコントを見ている喜びを感じさせてくれた。

 

コットン

練り上げられたサービス、システムの説明が完璧すぎて滑稽に感じる。専門業者という役柄ときょんの器用で細かい演技がマッチしている。自分はこのネタの題材があまり好きじゃないので、さっき書いた最後の絵の印象度、爆発力が評価を底上げしたという印象を受ける。ナイツの塙さんが言ってたつっこみの過剰さが余分に感じるというのは同意見。

 

ビスケットブラザーズ

審査員が高得点を連発して会場も大ウケだったけど、そこまで面白いネタだと思わなかった、理解ができなかったというのが正直な所。シュールというのかファンタジーというのか、そもそも野犬と戦うってどういう状況なのかが掴みにくい。

 

ニッポンの社長

暗転、パロディ、天丼という、そもそもKOCでは評価されそうもないコントだった。予選で受けて、決勝でハマらなかったのは、ニッ社の認知度、ケツの愛され度より、テレビとライブの演出の違い、決勝と準決勝の空気感の違いなのかなーと思う。準決勝は1800キャパだから余計映えたというか、玄人客が多いとはいえ、キャパが大きくなればなるほど、分かりやすい笑い、笑いどころの提示がはっきりしたネタの方がハマりやすい。今回のニッ社、ロコディ、かが屋は今回のネタがベストパフォーマンスとは到底思えない。過去ネタもそうだけど、KOC優勝に照準を合わせた新しくて独特な感性のネタが作れるコンビだと思う。ただニッ社3回、ロコディ2回、かが屋2回チャンスを貰っていずれも上位に食い込めず、手の内がバレてきて若手が台頭して、鮮度と勢いを保てるかというと今年、来年が正念場になると思う。

 

最高の人間

ニュースで統一教会関連の事をやってるご時勢柄が少し影響してるかもしれない。洗脳、マインドコントロールよりタブー視されている、ロボトミー手術を匂わせるネタを素直に笑っていいものかどうか、考えてしまう年齢になった。改変した後半パートを含め明らかに準決勝の時の方が面白かった。後付けで理由や意味をくっつけても、取ってつけたようにしか感じない。岡野さんの魅力は、一発の発想が独創的で他の何物にも代えがたい圧倒的な物であること。原型は最高のネタだったけど、色々弄ってなんだかよくわからない話になってしまった。ネタ書き同士のユニットで折衷案みたいな所になっちゃったのかもしれないけど。

 

ファイナルステージ

 

や団

飯塚さんのコメントに思わずおおっとなるほど、自分もお気に入りのネタだった。狂気的な雰囲気を醸し出すロングサイズ伊藤さんの演技は、ゾーンに入って役になり切ってるように感じた。狂気を感じさせる役ながら、その理由が天気予報が外れた事を逆恨みしてるだけというしょうもなさのギャップも面白いし、殺人犯とかよりもサイコなものを感じさせる。張り巡らされた伏線をすべて回収しており、無駄なセリフややり取りが一切ないのも素晴らしい。

 

コットン

話を積み上げつつ、小さな笑いを当てつつ、印象的な場面も作りつつ、なんといっても最後の畳みかけの印象度が強い。2時間の映画を5分に、みたいな事を誰かのVTRの時に言ってたけどまさにそんな感じで、初対面のお見合いからプロポーズまでのストーリーを5分で駆け抜ける。ドラマティックな音楽が無理のある時間尺を、劇的な話にすり替えてくれる。最後の絵という意味では、いぬ以上に印象的なコットンの2本目だった。

 

ビスケットブラザーズ

1本目は変なキャラが出てきて変な事を言っている…くらいしか感じなかったけど、2本目のネタは日常の中の設定で、奇想天外さが分かりやすかった。コットンと少し被ってしまったけど。多重人格を連想するけど、もっとポップで無邪気なギャグマンガ的な面白さを感じた。コント師っていろんな役柄を演じ分けるので、多重人格っぽい側面はあると思うけど、一人二役みたいなネタをこういう形で演じるコントは新しく感じる。3組ともファイナルステージのネタの方が面白いと思った。

 

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