M-1グランプリ2024雑感

・全体

あまり体調が良くなくて、ノンストップで見ててかなり疲れた。放送時間枠が3時間40分で、流石に長すぎるかなと思う。その前の敗者復活戦も3時間半程度あった。M-1特有のゴージャスで仰々しい雰囲気は良さではあるけど、もう少し気楽に、タイトな時間で見たい所もある。昔は2時間半枠くらいだった気がする。敗者復活戦の1組目から、本選のファイナルの3組目まで、ずっとハイテンションを維持するのは、夢のように楽しいと思う反面、ボリューミー過ぎるとも思う。

 

ネタの感想を大まかに

 

令和ロマン

昨年王者、優勝候補の令和ロマンが一番をまた引いた所が今大会の一番のクライマックスだったと思う。会場が騒然とする中、ネタが始まるあの雰囲気はちょっと他にない味わいがあった。ネタは、準決勝のネタをやらないんだと思って、子供の名前というテーマでしっかりウケてるけど自分はあまりハマれず。でも審査員が高評価、大吉さんが95以下は考えられないとも言ってたので、プロはもっと深い所を見ているというか違う視点で見ているんだろう。もう一回じっくり見てみる。

 

ヤーレンズ

まあいつものヤーレンズの感じだなと思って、昨年の方が飛び抜けて面白かったかというとそうだっけという感じで、自分が抱いているヤーレンズのイメージ、バットを短く持ってコンスタントにヒット、ツーベース、四球、盗塁、バントで延々と繋がっていく打線、そういうつるべ打ちしていくみたいなものをイメージしてて、昨年も今年もそんな印象だった。昨年のネタをもう一回見たら、ああ昨年はもっと爆発力があったなと思い直すかもしれないけど。見ている側が、ヤーレンズに慣れて認知してハードルが上がっただけという気もする。

 

真空ジェシカ

非の打ちどころのない素晴らしい出来だったと思う。小難しい所もなかったし、分かりやすい上に、一個一個のボケが強すぎる。山内さんが言ってた感想が良くわかる。これで3位通過で優勝できないというのは全体のレベルが高すぎるというか、めぐり合わせ次第の事に思える。来年からも決勝常連だろうし、いつ優勝してもおかしくないコンビだと思う。

 

マユリカ(敗者復活戦勝者)

3連単の人気上位3組の後というのは順番としては一番きついと思う。マユリカらしさに溢れる楽しい漫才、これはこれで文句のつけようのない出来だけど、結果的にファイナルに進んだ2組と比較されたのは運がなかった。構成が合理的すぎるというのは、綺麗な伏線回収やまとまりがあり作品性があるものの、予定調和にも感じる。今のM-1決勝のレベルになってくると、非合理な言動だったり、破綻したり、筋が読めない展開が期待される。よく山内さんがわけのわからないボケが欲しい、というような事をコメントするけどそれはわかる。よく出来てる、がイコール優等生漫才に感じる。

 

・ダイタク

「ネタは完璧」と審査員がしきりに言ってたし、このネタが面白くないわけはない。塙さんもリスペクトのコメントを残した。「きれいすぎる」とも誰かが言ってた気がするけど、無駄やはみ出し、余白のようなものがなくて、4分間笑いどころだけを詰め詰めにして密度が凄いんだけど、見てる方はちょっと疲れてしまうというか、圧迫感のようなものすら感じる。ダイタクの漫才は他のネタもそうだけど、台本の完成度がものすごい。双方とも長台詞があり、すべて考えつくされた言葉がタイトな形で凝縮している掛け合いがずっと続く。まあ漫才ってそういうものなんだけど、セリフ量の多さ、テンポ感、密度を考えると、ネタが詰まったりしないかという事を気にして見てしまう。2人もおそらく、ネタをやり切れさえすれば、ネタは絶対の自信作だから、良いパフォーマンスをしたいと思ってると思う。そういう一言一句言い間違えが許されない緊張感が見ている側にも伝播する所がある。一か所、言い間違えた時、ヒヤッとしてその後持ち直して凄いと思ったけど、そっちにばかり気が行ってしまった。

 

・ジョックロック

このレベルの大会、日本最高峰の現役漫才師による審査員だとお見通しな所があり、ボケの弱さや、そもそも何の治療をしているのかよくわからないというネタの粗さを指摘していた。言われて、なるほどなあと思う。そのコメントを受けて、つっこみのワードを引き立たせるためのストーリーであり、相方の振る舞いになっているように感じられてしまう。つっこみのワードでコンスタントに大きな笑いを生みだしていく才能はすごい。パターンがバレてしまったとはいえ、独特の芸風を獲得しているんだから来年以降も色んな賞レースで勝ち残ってくるんだろう。つっこみの人のあの言い方は汎用性がありバラエティ番組に沢山呼ばれそう。

 

・バッテリィズ

ボケとつっこみじゃなくて、アホと説明者という関係性が独自なんだなと改めて気付く。ブラマヨもミルクボーイも一時期の和牛も、ボケとつっこみではない独自の関係性によるやり取りをしゃべくり漫才に昇華して、オンリーワンの漫才を編み出した。「北海道」のネタを見た時からいつかは決勝に行くだろうと思ってたけど、数段進化して更に初見の人が理解できる分かりやすさも兼ね備えたネタを作って、決勝で爆跳ねするとは。ファーストラウンド1位通過というのはある意味で、もう一組の優勝者ともいえる。

 

・ママタルト

檜原さんの強調するつっこみは、自分も最初は苦手でだんだん慣れてきて面白く感じるようになってきたけど、これをどう取るかは難しい。最大の武器であり弱点でもある。あんなに大きな声で長いワードつっこみがあると、あまりにもここが笑いどころですよという提示になって、テロップで文字になってるくらいの印象を受ける。好き嫌いが出ると思う。礼二さんはメリハリをつけた方が良いのではとアドバイスをされていたけど、どうしてもテンポが悪くなるし、ネタ本編の時間が短くなるという不利もある。設定を生かして、ママタルトらしさを出して楽しいネタだったけど、動きのボケが多いとベタになりがちだし、190キロという巨漢は唯一無二なんだからそれを生かし切ったかというと、結局登場の所がピークだったのかもと思える。

 

エバース

このネタは何かで見たけど思い出せない。エバースはどのネタも本当によくできてて面白いと思う。台本勝負のコンビって淡々としがちだけど、町田さんが人間味あふれる振る舞いをするから、本当にテンパってるように感じておかしい。緊張したり噛んだりするという町田さんの特性もネタには良い風に作用してるのかも。誰もボケてないし、つっこんでもいないという、会話の面白さを追求したネタだと思った。

 

・トム・ブラウン

合体漫才の進化系。15年の集大成。こんなにわけがわからないネタで決勝まで上がってくるのが凄いし、決勝でも受けて高得点を獲得してるのも凄い。トムブラウンというコンビ、芸風が伝わってるからこそ。そして昨年の敗者復活戦のロンリーチャップリンのネタを踏まえた新作という所でお笑いファンは楽しめるけど、普通の視聴者は何が面白いのか理解できないと思う。自分もわからなかった。

 

ファイナルステージ

 

真空ジェシカ

どちらも真空らしい鋭い、センス勝負のネタだけど、1本目は全体に向けてるけど、2本目はもっと自分達のやりたいようにやったネタという印象。ただ真空の2本目も、トムブラウンの後の出番で見ると、スーパーナンセンスだけどなんてわかりやすくて親切設計なネタなんだろうと思える。このネタで優勝でも問題ないレベルで、面白いし独自だし真空らしい漫才。

 

・令和ロマン

準決勝イチウケのネタを温存してるという事はここで披露したら、優勝しちゃうなと思いながら見てたけど、やはり準決勝のネタだった。ちょっとこのネタは全体で見ても一歩飛び抜けてる。映画のように流れるストーリーの中で描かれる笑いの箇所がどれもえげつない位パンチが強い。真空も良かったけど、ここが圧倒的な横綱相撲だった。

 

・バッテリィズ

同じ構造の漫才で、2本目に弱い方を持ってくるというのは典型的な負けパターンで厳しいと思った。他2組が大人しければ1本目と合わせ技で優勝の可能性はあったと思うけど、真空も激強ネタだし、令和ロマンはギアを上げてきたとなると苦しい。