賞金奪い合いネタバトル~ソウドリ~ 2022.10.11

 

うるとらブギーズ(コント「プロポーズ」)

ビスケットブラザーズ(「コント「イチゴ」)

トンツカタン(コント「ラジオ」)

青色1号(コント「居酒屋」)〇

 

KOCの余韻が残る中で、KOCリベンジャーズ・世界最強ルーザー決定戦と銘打たれたネタバトルの決勝を流す配慮が嬉しい。そしてKOC王者でありながらここにも出場して勝ち抜いてたビスブラは時代が求めた存在に思える。うるブギ、トンツカタン、青色、来年のKOC決勝に全組が勝ち残ってても不思議ではない実力者で、それが窺い知れるコントを披露してくれた。トンツカタンは、出始めの時は優秀な人力舎の若手トリオという印象だったけど、段々この3人ならではのコント、雰囲気が出始めてきて良い感じがする。青色1号はじっくり時間をかけて芝居を見せてから展開させていくというスタイルが定着してハマってる印象がある。ショートネタとか、笑いどころをまんべんなくみたいなものが流行りだったり好きな人が多数だったりもするけど、対極に位置するような芝居をじっくり見せて、展開して落とすという王道が好きな人も同時に沢山いる。ショートネタとかギャグとかああいう瞬間芸みたいなのって、お笑いにあまり興味がない人や理解力が乏しい人に向けられたもので、本当にお笑いが好きなお笑いガチ勢は、4分なり5分で起承転結のある真っ当なコントが好きだ。テレビの視聴率主義が崩壊しつつある時代性と関係するか分からないけど、お笑いに関しては浮遊票を狙ってポピュリズムに走るのは愚行だという事に気が付いてほしい。KOCを見ても感じたけど、誰が見ても楽しめるのがお笑いの良さではあるけど、そこに寄せすぎないで本当に面白いと思うものを純粋に練り上げる大会があっても良いと思う。「芸人が芸人を笑わせる大会」というのが、レギュレーションの変更はあってもKOCの核、テーマだと思う。KOCのファイナリスト選出や審査結果の正しさは、すぐに売れるとか流行るとかそういう一過性のものではなく、大きな時間の流れで見ると正しかったんだとKOCの歴史が証明している。

賞金奪い合いネタバトル ソウドリ〜SOUDORI〜|TBSテレビ

キングオブコント2022 感想

個人的には跳ねきらずモヤモヤが残る回だった。個人的順位は、1位ダイアン津田&ランジャタイ、2位クロコップ、3位兎のコメント、4位や団の雨 5位いぬという感じで、冗談交じりだけど、実際そんな体感だった。

 

ファーストステージから各組について一言ずつ

 

クロコップ

ゲームとアニメとコントをミックスさせたような新感覚の楽しいネタ。ゲームをやっている時に感じる享楽性があり、見ている間ずっと楽しかった。早いテンポのBGMに合わせた動きとボケがあり、手を変え品を変え、いろんな手札を次々に披露していく流れが楽しい。個人的にはここがファイナルまで残る展開を期待したけど、トップにしては高得点という所に落ち着いて残念だった。

 

ネルソンズ

和田まんじゅうの存在感はすごい。志村けんを引き合いに出すのは違うのかもしれないけどそのくらい、まんじゅうという存在、人、キャラクターが魅力的で強い。まんじゅうが言えば何を言っても何をやっても面白い域に達してると思うけど、更にネタが作りこまれていてすごかった。VTRで悲哀と言ってたけど、やはりネルソンズはまんじゅうが悲劇に巻き込まれていく話が面白くて、その方向に狙いを定めたのが良かったと思う。ここは来年以降もまだ優勝するチャンスがありそう。

 

かが屋

予選で見た時はSとMというテーマがあまりかが屋らしくないんじゃないかと思ったけど、この話は、好きな異性に振り向いてもらいたくて異性の好みに無理をして合わせるけなげな恋心と、それに気付いて相手に好意を抱く話で、提示されているテーマに反してさわやかな男女の心の動きを描いている。そこにかが屋らしさがある。とはいえ初見だとSMの女王様の変なしゃべり方という所が分かりやすく、笑いどころを提示されているように感じてしまう。やはりSMというテーマは扱いが難しいんだと思う。かが屋のコントの魅力は、表情の変化や所作で、ドドドッと受けたり、何でもないような会話がよくよく考えると意味がある事に気付かされる、さりげなさにあると思う。そういう意味で今回のネタは言葉で全部説明してくれるし分かりやすいんだけど、あまり魅力は出てない気がした。他9組との比較というより、過去のかが屋のネタと比較して。

 

いぬ

受けきらなかったのは残念。飯塚さんの「キスは反則」というコメントはあまり意味が分からなかった。同じことの繰り返しに見えるけど、一回目の腕立てと二回目と三回目はそれぞれ全然意味が違って、それなのに同じ動作をするという所がこのコントの魅力だと思う。ハートマークになって終わるラストの絵が美しかった。以前に北野武が映画は4枚の絵で見せるイメージを持ってる、というような事を話していて、自分もその話を聞いてからコントの最後の絵に対して拘りを感じるようになって、最後の絵が綺麗に決まるコントは少し評価が高くなった。題材に関して、不倫っぽいから敬遠されるのかとも思うけど、それだったらコットンのネタに対してヘイトがもう少しあっても良いから倫理観どうこうの話でもないのかもしれない。ただ作中で何も説明をされてないので、純愛という風に自分は見るし、余計な事を考える必要はないと思ってる。松ちゃんが高得点つけてくれたのは救われる。

 

ロングコートダディ

今回のネタはベタで分かりやすいという感じもしたけど、話の通じない相手とコミュニケーションを図ろうと苦心する過程を描いたコントなのかなという感じもする。ただ帽子が落ちるからしゃがんでという事を伝え続けて、伝わらない5分間。一見ベタなようでシュールでもあり、ロングコートダディらしい新しい感性を感じる。相手を怒ったり、バカにしたり、何で伝わらないんだと憤るような、普通はあっても良い切り返しはなく、番組ADという役回りに沿って、相手に気を遣って失礼な事は言わず、番組を成立させるために伝え続けている。そういう相手への配慮が見える所が現代的に感じた。

 

や団

気になる所が2つあって、1つは死亡判定が荒い、もう1つが自分が殺人をしたわけでもないのに友達の為に死体隠蔽工作をするのはなぜなのかという所。改めて見てわかったのは、死亡判定が甘いのはドラマとかでも良くあるけど、これはそうしないと話が転がらないので仕方がないことだという事、友達の為にそこまでやるのは経験者なので自然と普段は隠してるアブノーマルな人格が出てしまったという事。2つ目に関しては、よくよく考えてみれば論理的だ。白いパーカーのフードをかぶって鼻歌を歌ってる場面は最高にサイコで面白かった。キャラクター性が一切ない、3人の演技と台本だけで進行する形がシンプルにコントを見ている喜びを感じさせてくれた。

 

コットン

練り上げられたサービス、システムの説明が完璧すぎて滑稽に感じる。専門業者という役柄ときょんの器用で細かい演技がマッチしている。自分はこのネタの題材があまり好きじゃないので、さっき書いた最後の絵の印象度、爆発力が評価を底上げしたという印象を受ける。ナイツの塙さんが言ってたつっこみの過剰さが余分に感じるというのは同意見。

 

ビスケットブラザーズ

審査員が高得点を連発して会場も大ウケだったけど、そこまで面白いネタだと思わなかった、理解ができなかったというのが正直な所。シュールというのかファンタジーというのか、そもそも野犬と戦うってどういう状況なのかが掴みにくい。

 

ニッポンの社長

暗転、パロディ、天丼という、そもそもKOCでは評価されそうもないコントだった。予選で受けて、決勝でハマらなかったのは、ニッ社の認知度、ケツの愛され度より、テレビとライブの演出の違い、決勝と準決勝の空気感の違いなのかなーと思う。準決勝は1800キャパだから余計映えたというか、玄人客が多いとはいえ、キャパが大きくなればなるほど、分かりやすい笑い、笑いどころの提示がはっきりしたネタの方がハマりやすい。今回のニッ社、ロコディ、かが屋は今回のネタがベストパフォーマンスとは到底思えない。過去ネタもそうだけど、KOC優勝に照準を合わせた新しくて独特な感性のネタが作れるコンビだと思う。ただニッ社3回、ロコディ2回、かが屋2回チャンスを貰っていずれも上位に食い込めず、手の内がバレてきて若手が台頭して、鮮度と勢いを保てるかというと今年、来年が正念場になると思う。

 

最高の人間

ニュースで統一教会関連の事をやってるご時勢柄が少し影響してるかもしれない。洗脳、マインドコントロールよりタブー視されている、ロボトミー手術を匂わせるネタを素直に笑っていいものかどうか、考えてしまう年齢になった。改変した後半パートを含め明らかに準決勝の時の方が面白かった。後付けで理由や意味をくっつけても、取ってつけたようにしか感じない。岡野さんの魅力は、一発の発想が独創的で他の何物にも代えがたい圧倒的な物であること。原型は最高のネタだったけど、色々弄ってなんだかよくわからない話になってしまった。ネタ書き同士のユニットで折衷案みたいな所になっちゃったのかもしれないけど。

 

ファイナルステージ

 

や団

飯塚さんのコメントに思わずおおっとなるほど、自分もお気に入りのネタだった。狂気的な雰囲気を醸し出すロングサイズ伊藤さんの演技は、ゾーンに入って役になり切ってるように感じた。狂気を感じさせる役ながら、その理由が天気予報が外れた事を逆恨みしてるだけというしょうもなさのギャップも面白いし、殺人犯とかよりもサイコなものを感じさせる。張り巡らされた伏線をすべて回収しており、無駄なセリフややり取りが一切ないのも素晴らしい。

 

コットン

話を積み上げつつ、小さな笑いを当てつつ、印象的な場面も作りつつ、なんといっても最後の畳みかけの印象度が強い。2時間の映画を5分に、みたいな事を誰かのVTRの時に言ってたけどまさにそんな感じで、初対面のお見合いからプロポーズまでのストーリーを5分で駆け抜ける。ドラマティックな音楽が無理のある時間尺を、劇的な話にすり替えてくれる。最後の絵という意味では、いぬ以上に印象的なコットンの2本目だった。

 

ビスケットブラザーズ

1本目は変なキャラが出てきて変な事を言っている…くらいしか感じなかったけど、2本目のネタは日常の中の設定で、奇想天外さが分かりやすかった。コットンと少し被ってしまったけど。多重人格を連想するけど、もっとポップで無邪気なギャグマンガ的な面白さを感じた。コント師っていろんな役柄を演じ分けるので、多重人格っぽい側面はあると思うけど、一人二役みたいなネタをこういう形で演じるコントは新しく感じる。3組ともファイナルステージのネタの方が面白いと思った。

 

https://king-of-conte.com/

キングオブコント2022 ネタ演目

 

ファーストステージ

 

●クロコップ(「カードバトル」)準決勝1日目のネタ

ネルソンズ(「結婚式」)準決勝1日目のネタ

かが屋(「女上司」)準決勝1日目のネタ

●いぬ(「パーソナルトレーナー」)準決勝1日目のネタ

ロングコートダディ(「料理対決」)準決勝2日目のネタ

●や団(「バーベキュー」)準決勝1日目のネタ

●コットン(「浮気」)準決勝1日目のネタ

ビスケットブラザーズ(「野犬」)準決勝2日目のネタ

ニッポンの社長(「ヴァーリオン」)準決勝1日目のネタ

●最高の人間(「テーマパーク」)準決勝1日目のネタ

 

ファイナルステージ

 

●や団(「雨」)準決勝2日目のネタ

●コットン(「お見合い」)準決勝2日目のネタ

ビスケットブラザーズ(「バイトの友達」)準決勝1日目のネタ

 

キングオブコント2022 – 今年一番おもしろいコントをする奴らは誰だ!?『キングオブコント2022』優勝賞金1000万円は誰の手に!? 2022年5月19日(木)からエントリー受付開始!

賞金奪い合いネタバトル~ソウドリ~ 2022.10.4

 

●さんだる(コント「TP(トップオタ)」)

青色1号(コント「英語禁止ゲーム」)〇

●TCクラクション(コント「視野」)

 

 

個人的にはさんだるが一番良かった。単に笑えるというだけじゃない、人情劇みたいな雰囲気があって他のネタも含めて気になってるコンビだ。笑いの量は青色が抜けてたので結果に不満はないけど。

賞金奪い合いネタバトル ソウドリ〜SOUDORI〜|TBSテレビ

最近見たテレビ

 

ネタパレ

ぱーてぃーちゃんの漫才は相変わらず良い感じ。M-1も全然あり得ると思う。かが屋、ABCの時のネタでオチを変えてて、ABCでやった方が良かったと思った。ニッ社は相変わらずベタとシュールのハイブリッドで面白い。

ネタパレ - フジテレビ

 

フリースタイルティーチャー

女性芸能人No.1ラッパー決定トーナメント。やす子はラップっぽさはないけど、勢いで捲し立てる感じがあって強い。即興で言葉を紡ぐ、切り返すという意味では芸人さん、バラエティを主戦場にしている人はフリースタイルラップバトルと相性がいい。眉村ちあきvsやす子の決勝になると予想。眉村ちあきに惜敗した女子プロレスラー松本都も気持ちが乗っててかなり良かったと思う。今回のトーナメントは、相手へのリスペクトが込められたバトルが多く、下品なワードやdisが殆どないのが、物足りなさを感じる反面、さわやかで良い。

フリースタイルティーチャー|テレビ朝日

 

証言者バラエティ アンタウォッチマン

芸人ソング特集が意外と面白かった。昔は番組絡みだったり、単純に人気が出てCDデビューとか結構あったけど、最近はそもそも芸人さんのCDデビューが少ないし、CDを出しても話題になりにくい。ブラピの「Timing」の歌詞、ビビアンのことをテーマにしたというのは灯台元暗しで気付いてなかった。BE-BOP HIGH SCHOOL特集、完全にサンド発案じゃんと思ってたらアンタ柴田だった。BE-BOPは大好きなんだけど、自分は1OVAアニメ2漫画3実写映画の順で好きで、あんまり映画に思い入れがない。映画は子供の頃見てて、バイオレンス描写が生々しくて怖かった記憶がある。

お笑い実力刃presents 証言者バラエティ アンタウォッチマン!|テレビ朝日

 

ジロジロ有吉

女性芸人がチャレンジする企画で方向性が定まった感じがする。フタリシズカのかりこるとか、元はなしょーのはなとか、他の番組はピックアップしてこなかったけど、チャレンジ系企画に適した能力のあるタレントを抜擢する所が好き。はなは特に、元相方の方には申し訳ないけど、ピンになってより、売れっ子になるイメージが湧いている。

ジロジロ有吉|TBSテレビ

 

探偵!ナイトスクープ

最近面白かったのは、TikTokでバズってるお母さんの回、「森のくまさん」を格好良く踊る姉の回、コンビニで大食いする回、カレー屋のクイズゲームの回あたり。

探偵!ナイトスクープ | 朝日放送テレビ

 

フリースタイルティーチャー

眉村ちあきvsでか美ちゃんのバトルが激熱だった。芸人さんのバトルだと、相手を言い負かすdisの側面が強くてそれはそれで大好きなんだけど、今回の互いに相手への敬意や愛をラップに込めてぶつかり合うピースフルなラップバトルに感動してウルッと来てしまった。前に出てたネコニスズのヤマゲンもそういう雰囲気はあった。こんな素晴らしいバトルを見せられると、もうミスXという番組側の仕掛けは、蛇足どころか余計な演出になる可能性が高い。エキシビジョンマッチでのマイクパフォーマンスさながらの松本都のラップも最高だった。

フリースタイルティーチャー|テレビ朝日

BUCK-TICKの全フルアルバムを回想する⑤

RAZZLE DAZZLE

2010年作。このアルバムはすごく好きで通して良く聴いている。80年代っぽいシンセサウンドって過去の作品のデジタルとは趣が違って、新鮮に感じた。80年代ポップもあれば、BTらしいダークな曲、ラテン曲もあり、櫻井今井ツインボーカル曲もありバラエティに富んでいる。

 

夢見る宇宙

2012年作。ストレートなロックンロールみたいなタイプの曲があんまり好きじゃないので飛ばしてしまいがちなのでトータルで聴く機会は少ないかもしれない。アルバム総体というより楽曲単位で「エリーゼ」、「MISS TAKE」、「夢路」、「夜想」、「夢見る宇宙」辺りは好きという感じ。

夢見る宇宙

夢見る宇宙

  • アーティスト:BUCK-TICK
  • 徳間ジャパン
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或いはアナーキー

2014年作。近作の中で特に今井さん色が強いアルバムという印象で、今井さん作詞の曲が多い。このアルバムは芸術がテーマで、今井さんは元々好きなんだと思うけどダダイズムとかシュールレアリスム良いよね!という熱にメンバーが良いよねって共鳴していったようなイメージが思い浮かぶ。星野さんは「SURVIVAL DANCE」と「サタン」を聞く限りはテーマ、コンセプトに頓着せずマイペース。散文的な「NOT FOUND」、「ボードレールは眠れない」辺りが特に好き。

或いはアナーキー(通常盤)

或いはアナーキー(通常盤)

  • アーティスト:BUCK-TICK
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アトム 未来派 No.9

2016年作。癖が少ないアルバムで、ダークで打ち込みありのロックというBUCK-TICKらしいアルバム。前半にアップテンポの攻撃的ナンバー、中盤ミディアムテンポ、ラストが希望にあふれた「NEW WORLD」で終わるアルバム全体の流れが良い。良曲が多く、2022年発売のベストアルバムに収録された曲が多い。

 

No.0

2018年作。重厚なゴシック「BABEL」、美しいミディアムバラード「Moon さよならを教えて」という先行シングルの時点で期待が高まったけど、相変わらず楽曲に関してはBUCK-TICKなんだから良くて当たり前という、良いアルバム、良い曲を淡々とコンスタントに生み出し続ける化け物バンドだと思う。完成品として「狂った太陽」「Six/Nine」というものがあって、基本的には音楽としてはそこから何も変わってなくて、新しい要素を取り入れたり、チャレンジをしたり、時代に合わせて変化し続けているバンドだと思う。

 

ABRACADABRA

2020年発表の最新作。最高傑作は「Six/Nine」だと思っているけど、BUCK-TICKの作品を聴いていると、必ずしもそうではないのかなと思えてくるし、35年というキャリアを積んだ今、それを更新するようなもの凄いアルバムを作るんじゃないかという期待感を常に抱かせてくれる。95年以降の作品は、この記事で書いているように好き嫌いの波はあれど、どの作品も魅力的なもので、BUCK-TICKでしか表現できない世界が広がっていた。普通、バンドって良いアルバム、良い曲って限られてるものだけど、デビューから還暦近い年齢に至るまでの作品で、クオリティを落とさず、新しいものを取り入れながら成長を続けるバンドって世界的に見ても希少だと思う。このアルバムだと特に「ユリイカ」。ここ数年で出したシングルを含むどの曲よりもライブで一体になれそうなキャッチーでシンプルなロックナンバー。心のどこかで初期に立ち返ったようなこういう曲を待っていたのかもしれない。「ONLY YOU」とか「CLIMAX TOGETHER」はあんまりBUCK-TICKっぽくなかったのでこれじゃない感があったけど、この曲は「HURRY UP MODE」から「SEVENTH HEAVEN」の頃のBUCK-TICKの匂いが残ってる。

ABRACADABRA

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BUCK-TICKの全フルアルバムを回想する④

ONE LIFE.ONE DEATH

2000年作。このアルバムはポップでメロディが強いという印象であまり人を選ばない作品だと思う。楽曲もアレンジも相変わらずキレキレ、絶頂期の作品だけあり、デカダンスとかゴスとかそういう世界観が好きな人でも音楽の良さで黙らせるような力がある。「SSL」が97年、「囁き」と「月世界」が98年でこの時期は結構マニアックなイメージだったけど、ポップ&デジタルな99年のシングル「BRAN-NEW LOVER」と2000年のこのアルバムで雰囲気が変わった。

 

極東I LOVE YOU

2002年作。あんまり人気がないアルバムみたいだけど、自分は大好きだ。フォークとエレクトロが混在したフォークトロニカの温かみのあるサウンドが好きで、この時期結構ポストロックを聴いてたのでこの時代の音だなあと今聴くと懐かしさもある。「GHOST」と「謝肉祭」と「WARP DAY」と「王国」が好き。「王国」の極東のシングルのカップリングに入ってたバージョンもポストロック的なアプローチで好きだった。

 

Mona-Lisa OVERDRIVE

2003年作。BPM早めでガンガン攻める前半は格好良いんだけど、後半の曲が櫻井さんの歌詞にしては情景みたいなものがイメージし辛くて楽曲の印象が薄い。櫻井さんの歌詞について、5ちゃんとかでマンネリとかよく言われるけど、まあキャリア長いししょうがないんじゃないと思いつつも、櫻井さんほど、音のイメージを言語化して表現できる作詞家って他に居ないと思う。

 

十三階は月光

2005年作。アルバム「悪の華」のアップデート版みたいなイメージのあるアルバム。ゴシックでシアトリカルな世界。櫻井さんが色んな役を演じる感じで作詞した、みたいに言ってた気がするけど、それはそれの魅力はあるし、やっぱり櫻井さんには、そしてBUCK-TICKにはこういうダークでゴシックな世界は合う。ただ役を演じているせいかどこか、カラッとしていて、この世に生きる苦しみ、辛い、死にたい、祈り、希い…みたいな櫻井さんのリアルな心の闇はない。その辺りが「悪の華」と似ている。ゴシックで統一されたアルバムのトーンに浸って楽しめるし、楽曲がどれも素晴らしい。特に「ROMANCE」と「DIABOLO」という名曲を生み出したというだけでもこのコンセプトは大成功だったと思える。

 

天使のリボルバー

2007年。デジタルとかノイズとか凝ったアレンジはなくなり、シンプルなバンドサウンドに回帰した作品。買った当時以降は通して聴いたことがない。「alice~」「REVOLVER」、「モンタージュ」、「RENDEZVOUS」辺りは好きだ。特に「alice~」はPVの世界観も含めて、他の曲にはない可愛さがあり思い入れがある。なんでこんな良い曲が固定ファン以外に売れないんだろう?と不思議に思った。

 

memento mori

2009年作。「天使は誰だ」「セレナーデ-愛しのアンブレラ-sweety-」等楽曲単位では好きな曲はあるけど、通して聴くことはあまりない。攻撃的でダークな楽曲が多いので、乗れるアルバムだと思うんだけど、正直な所、2007年と2009年の作品は、自分が求めているBUCK-TICKとは微妙に違った印象がある。