BUCK-TICK新アルバム「異空-IZORA-」感想

歌詞が重い曲が多くて、唄や詞に引っ張られるような所がある。自分はどちらかと言えば、何について歌ってるのかよくわからないような歌詞の方が好きで、過去作で言えば「Long Distance Call」や「ゲルニカの夜」は名曲だと思うけどあまり好きではない。前作の「MOONLIGHT ESCAPE」も死を匂わせるような歌詞に感じて、いや逆に死からのエスケープなんだよと言われればそうなのかなとも思うけど、いずれにしても重い。前作で言えば「ケセラセラエレジー」のような歌詞や「凍える」のような歌詞が好き。昔あっちゃんが雑誌のインタビューで「限定的なイメージを与えたくないので歌詞の解説はあまりしたくなくてそれぞれ思い描いてほしい」というような事をよく言ってたけど、この作品の数曲は「戦争」「死」というものをハッキリイメージさせる言葉の力が強くある。「愛だの恋だの歌ってる」あっちゃんが好きだったり、初期の良くわからない横文字や難しい言葉を使って、夢や悪夢というイメージを売っていた頃の方が歌詞は好きだと思う。初期の「TABOO」は暗いけど、でもよくよく考えたら歌詞が暗いのって「EMBRYO」くらいの気がするし、「Six/Nine」も、「Somewhere Nowhere」や「デタラメ野郎」ってシリアスな曲だけど、あの2曲って笑って聞くのが正解の気がするし、「見えないものを見ようとする誤解 すべて誤解だ」はめちゃくちゃ格好いい曲だけど、歌詞は何を言ってるのか未だにはっきりと理解はしてなくて、だからこそ重く感じさせない良さがある。歌詞が強いとそっちに意識が行って何も考えずに音楽を聴く楽しさが薄れてしまう。櫻井さん色が強いアルバムという事で「極東I LOVE YOU」が引き合いに出されることもあると思うけど、力強い反戦歌もある一方で、あのアルバムの持つ独特の温かみや素朴さとエレクトロが融合した感触というのはBUCK-TICKの長い歴史の中でも異色作だと思うし、他に代えがたい魅力を感じてる。「異空」にも救いや前向きなメッセージはあるんだけど、陰鬱と反戦の色が強くて聴いてると結構エネルギーを消費する。「異空」から好きな曲は、好きな順に「無限LOOP」「THE FALLING DOWN」「名も無きわたし」「太陽とイカロス」「さよならシェルター」「ヒズミ」「ワルキューレの騎行」かなー。